O2Oが進展すると店舗売上は3割減少する!?

 
スマホの普及とSNS、価格比較やレビューサイトといったインターネット・サービスの発達は、消費者をどんどん賢くしている。

商品を店頭で買う前に、友人に評判を聞いたり、価格比較をしたり、レビューサイトを見ることが簡単になったからだ。

さらにはamazonのFlowの様なスマホ・アプリを使えば、商品のパッケージやバーコードにカメラをかざすだけで、店頭で価格検索、レビュー閲覧、さらには購入までが非常に簡単にできてしまう。

こうしたツールが使われる様になると、店舗では現物を見たりフィッティングをするだけで、後で価格の安いECで商品を購入するという消費行動が増えることになる。いわゆる「店舗のショールーム化」が生じる状況だ。

こうした消費行動の増加は、小売店舗にとって非常に深刻な事態を招く。店舗での売上が減少し、店舗への投資や運営費を回収することが困難になるからだ。

「店舗からの送客をアフィリエイト広告的に評価すれば良い」という考えもあるが、数%前半のECアフィリエイト報酬と、通常3~4割ある店舗販売の利幅を比べると、店舗を無人化するなど、抜本的な運営費削減をしないとそろばんが合わない。

 

こうした店舗での消費者の行動について実態把握を行った興味深いアンケート調査結果が米国で発表されている。

以下では、この結果データを使い「店舗のショールーム化」によって、店舗にどれくらいの売上減少が生じるかを試算してみたい。

まず、「店舗で価格比較をする」という人は現状22%であり、その後、ECで買ったり、他の店で買ったりせず、その店で買った人の割合は35%。 見方を変えると、店舗で価格比較をして、その店舗で買わなかった人は全体の14%(=22%×(1-35%))になる。

このインパクトを考慮する上で、厳密には店舗で価格比較をしなかった人がどれくらい店舗で購入したかのデータが必要だが、ここではシンプル化のため100%としておく。(実際には買う気の無い来店者がいるので、その量を考慮する必要が有る。クリスマスシーズンなので、少なかった可能性はあるが…)

 

【店舗での消費行動(米国、先のクリスマスシーズン)】

 

【直近で行った店舗での価格検索の後の行動(米国)】

 
この調査結果は先のクリスマスシーズンのデータなので、今後のことを考えるために、他の米国調査から消費者の利用意向データを拾ってみたい。
 

【利用可能であれば使ってみたいモバイル・サービス(米国)】

 
FRSの調査によれば、もし利用可能であれば47.3%の人が「ショッピング中に価格比較を利用する」と回答しているので、この数字を先の数字と置き換えてみよう。すると、店舗の売上減少は31%(=47.3%×(1-35%))になる。

 

こうした試算結果は、あくまで粗い試算で、実際には扱う商品の単価や購入頻度によって、価格比較やその後の行動は違ってくる。

また、O2Oは決してネガティブなインパクトだけを与えるものではない。店舗で実勢価格やレビューを見れることで迷いがなくなり、その店舗で購入決定をするといったポジティブな効果も見込めるだろう。

この試算結果から言える最大のポイントは、中期的に見て売上3割減はあり得るが「完全ショールーム化」はしないということだ。

 

現在のO2Oの流れは、消費者行動、企業のマーケティング活動の両面で、留まることなく進んでいく。

店舗小売業とすると、売上3割減に耐えられる品揃えやオペレーションを考えることをきっかけとして、O2O時代の新しい店舗業態について検討を始める時期に来ているのではないだろうか。