携帯キャリア各社の端末販売がスマートフォンにシフトし、スマートフォンの普及拡大が言われているものの、大和総研の市川主席研究員のコラム(※調査手法による偏りを適正に評価している。)を見ると、2014年はじめのスマートフォンの人口普及率は約4割。50代以上を見ると、明らかにガラケーがまだまだ強いのが実情だ。
頻繁にリリースされる普及率データは、インターネット・ユーザーに対する調査であることが多く、一定の偏りが避けられない。こうした調査結果では5割を超える数字もよく見られるが、マーケティングをする側としては、冷静にデータを見極める必要が有る。
また、端末の普及は、決して活用度が高いことを意味していない。30代以上のユーザーから「QRコードリーダーが使えない」、「スマホのウェブ・ブラウザにどうやってURLを打てば良いのか分からない」といった声も良く聞く。
消費者向けのCRMについてクライアントと話していると、消費者の利用するITツール、メディアが多様化する近年、「消費者とのコミュニケーション・チャネルをどう再構築すれば良いか?」とよく聞かれる。
相変わらず、eメールが有力であることは事実だが、もうeメールだけでは不十分であることも明らかだ。
若者を中心に浸透度の高いLINEへの対応やアプリでのコミュニケーションに取り組む企業も多い。
先のコミュニケーション・チャネルの質問に対する正確な回答は、クライアント各社の顧客層によって異なることは言うまでも無いが、私が最近注目しており、幅広いクライアントにご提案できると考えているのは、SMS、電話を使ったソリューションだ。
まず、5年以上前から可能性に注目していたテレコールSMS(電話を掛けるとSMSが帰ってくる仕組み)にふれたい。当時、私は大規模な会員組織を管理していた。モバイル・メールはコスト面で非常に優れていたが、幅広い年代、様々なリテラシー・レベルの消費者、面倒くさがりの消費者をカバーするには十分とは言えなかった。
テレコールSMSという最高にシンプルなサービスの事を知り、コストをどこまで下げることができるか、事業者と随分交渉したが、当時はSMS送信一通50円を切ることはどう考えても無理、別途着信コストを払うのに+10円で、見送らざるを得なかった。
それが、この1年ぐらいの間に、テレコールSMSのコストは劇的に下がった。よく見られるSMS送信一通15円も最安値では無い。各事業者の戦略転換もあったと思うが、クラウド系の電話・SMS事業者の世界的な拡大が後押ししたと思われる。現状、トランザクションあたりコスト25円(15円+10円)というのが目安だが、これは今後、後でご紹介する様なクラウド系の事業者によって、さらに低コスト化が推進されることが見込まれる。
これぐらいのコストになれば、QRコード表示等と併記をして、会員獲得に使うことも十分可能になってくる。私が手伝っているビートレンドでは、将来を見込んで、テレコールSMSを有力なコミュニケーション・チャネルとして標準ASPの機能に組み込み、多くのクライアントにワンストップでご提供をする予定だ。
さらに注目すべきは、電話のクラウド・サービス化により、従来はeメール等のインターネット・チャネルとは別に運用されていた電話でのコミュニケーションが、インターネット・チャネルと統合可能になったことである。
こちらの領域でも、劇的なコストダウンが起こった。以前であれば電話系の新しいソリューションは初期費用が数百万円レベルになることも一般的であったが、クラウド系の事業者を利用することで、ほとんど初期費用を掛けずに取り組みが可能となったことは大きい。
私が注目しているのは、KDDIが日本における独占的な販売権を獲得したtwilio(トゥイリオ)。twilioを使えば、従来であれば専門の事業者に依頼する必要が有った自動応答システム(IVR)が数行のプログラミングで完成するし、応答時のテキストをテキスト入力しておいて音声変換してサービスすることもできる。twilioの本国である米国では、ユーザーの残したメッセージ(英語)を自動で読み取り、テキストに変換してデータベースに蓄積するまでが実現できている。
こうした形での電話の活用を改めて考えると、最も有望なのは防災市場だろう。近年、異常気象で自然災害も増える中、メールやアプリでの防災連絡ではカバレッジ、迅速性、到達率に課題が残る。特に逃げ遅れる事の多い高齢者にはインターネット・チャネルでは不十分だ。クラウド型の電話サービスを使えば、一斉に電話連絡をすることも可能だし、IVRと組み合わせて、情報収集をすることも簡単にできる。
一方で、大量の電話を一気に受ける場合、通常はコールセンター企業に依頼し、高いコストを払う必要があるが、こうした場合もクラウド型の電話サービスを使って、スケーラブルな受信機能と自動応答との組合せでバーチャル・コールセンターとして実現することができる。サービス・レベルに違いはあるものの、3~5年の内には、机をならべて、オペレーターを教育していた従来型コールセンターの一部は、クラウド電話とボーカロイド応答(笑)にリプレイスされているかも知れない。
蛇足だが、twilioを使った、とても面白い「1Click飲み」というアプリがある。ユーザーがアプリ画面で飲み会の人数を入力すると、アプリが近隣の飲食店を検索、最適と思われる飲食店をリストにする。その後、twilioの電話APIを使ってアプリが飲食店に順に電話をかけ、合成音声を使ってユーザーの代わりに予約の問い合わせをする。飲食店の店員は予約可能かどうか、音声アナウンスに従って電話番号をプッシュし返事するというものだ(店員の困惑顔が目に浮かぶが…)。
こうした新しいテクノロジーを組合せたSMS、電話のクラウド・サービスの活用可能性は、かなり広範囲にわたる。
久々に非常にワクワクする事業機会だと思う。